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本の制作過程を公開!オリジナルの本の作り方/A5/24ページ冊子【独学デザイン本】

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こんにちは、fuyuna(@fuyuna_design)です。

独学でデザイナーになった経験をもとに“独学”と“デザインの独学”の方法についてまとめた本、「独学デザイン本」を作りました

「どんな流れで制作を進めればいい?」
「使用するのはIllustrator?InDesign?」
「A5冊子の余白感がわからない…」
「表紙や中身のページに適した紙は?」

オリジナルの本を作るのは初めての経験で、それはもうわからないことだらけ。

それでも楽しく、いろいろ試行錯誤しながら制作・販売ができたので、今回は「独学デザイン本の制作過程」を解説していきます。

完成した独学デザイン本の紹介

まずは、今回作った「独学デザイン本」のご紹介です。

メインの内容は、「独学」そのものと「デザインの独学」の流れについてです。その他、2019年に制作したものや、オススメの書籍なども紹介しています。

本の仕様はA5仕上げ、全24ページ、フルカラー。

販売状況は以下の記事で更新中です。
独学デザイン本を販売中です|販売状況更新中

購入をご希望の方は、下のボタンからBOOTH販売ページへどうぞ。

fuyuna
fuyuna
2021年2月27日から改訂版を販売しました!

本の制作を始めたきっかけ

本の制作を始めたきっかけは、デザインに関する同人誌の即売&交流イベント『デザイン読書日和』への参加でした。(イベントは開催延期)

2019年9月、てまりさん(@temari_webdes)から「一緒にサークル参加しませんか?」とお誘いをいただき、本の制作とイベント参加を決めました。

当時は上京・デザイン会社への就職をして1ヵ月の時期で、正直働きながら制作できるのかという心配もありましたが、貴重な経験ができる機会だと思ったので挑戦することにしました。

制作に使用した道具

まずは、本の制作に使用した道具をご紹介。

定規、ふせん、筆記用具など

制作にあたって必要不可欠だった道具ランキング1位は「定規」でした。

  • 定規2種類(15cm/31cm)
  • 方眼ノート
  • ふせん(書き込める紙のタイプ)
  • 消しゴムとシャーペン
  • ボールペン(単色/3色)

今回の制作に使ったものとしてご紹介していますが、印刷物のデザインをするときは、基本的にいつも同じセットを使っています。

本に関する情報・メモは1冊のノートにまとめる

本を制作するにあたって、ラフイメージや内容に関するメモなど、なんでも自由に書き込めるノートを1冊用意しました。

個人的な印象として、アナログのノートとシャーペン・鉛筆を使って書く方が、メモアプリよりも自由度が高く、アイデアが出やすいです。思いついたときにすぐ書き込めるメリットもあります。

1冊のノートにまとめることで、考えたことやメモが時系列で確認しやすく、今後新たに本や冊子を作るときも「制作の流れ」を振り返りやすそうです。

あずき
あずき
デザイン読書日和のイベント当日には、このノートも持参して自由に見てもらえるようにする予定だったよ!

参考資料は本と購入した雑誌・楽天マガジン

余白感や文字の大きさ、写真の扱い、あしらいなどを勉強するため、写真の雑誌を含む5冊の雑誌を購入しました。

また、あしらいやレイアウトの参考資料として、楽天マガジン(雑誌が定額読み放題のサービス)で暇があればひたすら雑誌を見てました。

雑誌の具体的な使用方法は後ほどご説明します。

実際の制作の流れ

「本を作る」と決めた後、実際にどんな流れで制作を進めていったのかを説明します。

  1. アイデア出し
  2. 内容の方向性と仮タイトルを決める
  3. 本のサイズやページなどを決める
  4. 手書きで台割りを作る
  5. デザインのラフスケッチ
  6. 原稿と画像を用意する
  7. ページをデザインする
  8. 目次を作る
  9. 表紙をデザインする(表1・表4)
  10. 全体のデザインを整える

本を作ることを決めたのは2019年10月、実際に制作を開始したのは12月、途中で内容やデザインが気に入らずに一から作り直したのが2020年1月、本が完成したのが3月の初旬でした。

fuyuna
fuyuna
会社と個人の仕事をしながらの制作は時間を作るのが少し大変で、2月はめちゃくちゃ焦ったりもしてました…。

1.アイデア出し

本制作の最初のステップは「アイデア出し」から始まりました。

普段のデザインのお仕事なら、お客様からの依頼内容や解決すべき課題がありますが、今回は一から自分で考える必要があったので、以下のような点を踏まえてアイデアを出しました。

  • どんな内容に需要があるのか?
  • 自分が伝えられることは何か?
  • 本のイベント以外での使い道
  • 自分が作ってみたいもの

このアイデア出しの段階では“実現可能か”ということは深く考えず、「これを書けばいいのでは?」と思うものを自由にリストアップしていきました。

この期間にZINEの専門店(MOUNT ZINE)に行き、人が作った冊子を見たり買ったりして情報収集したりすることもありました。

参考記事:ZINEの専門店「MOUNT ZINE」に行ってきました

初期段階でのコンテンツ候補

実際に最初の段階で考えていた候補は以下。

  1. 過去の制作物まとめ
    ・過去に制作したデザインについて解説する
    ・万が一売れ残ってもポートフォリオになる
  2. ふゆなの本棚
    ・お気に入りのデザイン書籍をまとめる
    ・デザインに関係ない本も紹介する
    ・出版社の許可が必要
  3. ブログの記事をまとめる
    ・人気記事の内容をより詳しく書く
    ・ブログが下書きになるため作るのが少し楽
  4. ブログやSNSの運用に関するまとめ
    ・運用時に意識していること
    ・ツイッターやブログを書くときのコツなど

前提条件を踏まえたアイデアをリストアップすることで、「自分の経験・体験をもとにしたものが買ってもらえるのでは?」という考えに至りました。

せっかく作るんだから他の人にも書けるものではなく、自分がやってきたことを伝えようという方向で内容を詰めていくことに。

2.内容の方向性と仮タイトルを決める

アイデア出しでリストアップしたものと、自分の経験・体験をもとに書くことを決めた上で、さらに具体的に内容を検討し、仮タイトルを考えました。

内容の方向性を決める

リストアップした内容のものは、どれもSNSでの反応が良かったり、ブログの人気記事になっていたりするものだったので、需要は問題なく、人の役に立つ本が作れると考えました。

全候補の共通点と「自分らしいもの」について考えた結果、「独学」と「デザイン」をメインテーマに、自分の経験、好きな本、SNSの活用法などを少しずつ盛り込んだ内容にしました。

仮タイトルを決める

内容の方向性が決まったら、それに合う仮タイトルを決めます。

タイトルはその本の内容を示す重要なものなので、どうしてもしっかり考えたくなってしまいますが、とりあえず仮のテーマを決めて軸を作り、完成が近くなってきたら内容に合わせて変更すればいいと思います。

この段階での仮タイトルは「独学でデザイナーになるまで」でした。(デザイン読書日和のサークルカットにもこのタイトルが書かれています)

3.本のサイズやページなど仕様を決める

本の制作で重要な、サイズやページなどの仕様。
これが全く決まっていないと、まさにゴールのないマラソン状態になります。

  • 本のサイズ
  • ページ数(4の倍数)
  • 製本の種類(中綴じ/無線綴じ)
  • 綴じ方(右綴じ/左綴じ)

中身のデザインを作る前に、上記の項目を仮決定しておきました。
以下、それぞれについて説明します。

本のサイズ

手軽に読めるように今回はA5サイズを選択。

昨年行ったイベント“クリエイターエキスポ”で出品者さんたちのポートフォリオやパンフレットを拝見したとき、A5サイズが可もなく不可もなく良いサイズ感だったので参考にしました。

ページ数

ページ数は20〜24ページにする予定で進めました。

  • 初めての冊子制作であまりボリュームがあっても作るのが不安
  • おそらく制作にかけられる時間もそれほど多くない
  • 20〜24ページが気軽に読めて良いのでは?

上記のような理由で決めました。
実際、台割りを書き始めると「もっとページを増やしたい」と思うこともありましたが、結果的に初めての冊子制作は24ページでちょうど良い感じでした。

あずき
あずき
冊子のページ数は4、8、16、20、24…と4の倍数が基本だよ。間違えると後から構成やデザインを変更することになるから気をつけよう!

製本の種類

製本は中綴じを選択。

中綴じとは、紙を折ってホッチキスで綴じる、比較的安価に製本できる方法です。ページ数が少ない冊子に向いているそう。

ページの背の部分をノリで固定する無線綴じにも憧れましたが、手元にあった中綴じの雑誌でも問題なさそうだったのと、コストを抑えようとした結果、今回は中綴じを選択しました。

綴じ方は右綴じか左綴じか

最初は縦書きの文章を使った右綴じを予定していましたが、作っているうちに「横書きの文章を増やして左綴じにした方が読みやすい」と感じたので、急遽左綴じに変えました

右綴じ・左綴じがわからない場合は、国語の教科書が右綴じ、算数や英語の教科書が左綴じとイメージすると良いかもしれません。

fuyuna
fuyuna
視線の流れ的に、縦書きの本は右綴じで右上から始まる方が文章を読みやすく(国語の教科書)、横書きの本は左から文章が始まる方がストレスなく読めます(算数の教科書)。

4.手書きで台割りを作る

台割りとは、どのページにどんな内容を掲載するかをまとめた設計図のようなものです。

写真は初期の台割りで、右綴じを想定して右側からページが始まっています。最終的には左綴じになっていたり、コンテンツが入れ替わったり、途中で何度か書き直しました。

メモ書きレベルでも最初に台割りを書いておくことで、完成後のイメージができたり、印刷にかかる費用・日数・仕様などが見積もりやすくなります。

5.デザインのラフスケッチ

おおまかな内容が決まってきたら、デザインやレイアウトのラフスケッチをします。とてもキレイなものではないですが、実際のラフスケッチをノートから一部抜粋して公開。

メモ書きなのでキレイではないし、内容もしっかりお見せできるものではないので、あえて文字が見えにくい画像で公開しています。すみません。

ノートの中でレイアウトを考えたり、コンテンツについて自問自答したり、思考の整理をしたり、ラフスケッチ以外にも何でも書き込んでいきました。

ポートフォリオサイトを作った時にも「ふせん」が大活躍でしたが、今回もたくさん活用しました。ふせん大好きです。

ポートフォリオサイトの作り方と制作過程を解説【Webポートフォリオ】

6.原稿と画像を用意する

いよいよ中身の原稿や画像を用意します。原稿は移動中にnotionに書き溜めておき、画像は過去のブログやポートフォリオ、過去に撮った写真、素材サイトなどから集めました。

画像を用意するとき、印刷物の初心者デザイナーが失敗しがちな以下のポイントにも注意しました。(よく失敗する人はチェックシートを作るのがオススメ)

  • カラーモードはCMYK
  • 画像解像度は原寸サイズで300dpi以上
  • ファイル形式はPSD / EPS / TIFF
  • リンク切れしないよう1つのフォルダにまとめる

特に普段Web用の画像を多く取り扱う方は「カラーモード」と「画像解像度」に注意です。失敗するとディスプレイで見ていた色・画像の鮮明さが再現できなくてガッカリします。

7.ページをデザインする

ページのデザインは基本的にInDesignで行いました。

InDesignでのページデザイン

ネタバレの都合上とてもキレイな画像とはいえませんが、実際のInDesignの編集画面はこんな感じでした。

実際はグレーの部分に写真が入っていて、はみ出している部分は塗り足し部分になります。(3mm以上はみ出し過ぎてる部分はご容赦ください…)

InDesignのいいところは、全ページのマージンを一括設定できたり、ページ番号(ノンブル)や共通のデザインパーツが設定できたりするところ。

ページによってレイアウトが全て異なる自由なデザインをしたい場合はIllustratorが向いていますが、雑誌やポートフォリオのようにある程度フォーマットを決めて作る本・冊子はInDesignの方が効率的に作れます

今回は表紙以外をInDesignで作りました。

余白や文字サイズは実物の雑誌・印刷物を参考に

実際の余白や文字のサイズは、実物の雑誌・本・パンフレットなどをたくさん見ることでしか感覚が掴めません。

キレイに雑誌を作ってくださった編集者さんには申し訳ないですが、以下のように雑誌へ「文字の級数(Q)」、「余白・画像・ラインなどのサイズ」を書き込む形で勉強して自分の本に反映しました。

8.目次ページを作る

全体のデザインができたら、目次ページを作ります。

ページ数が少ない場合は作らなくていいかもしれませんが、個人的には目次があった方がパッと見て内容が把握しやすく、本らしくもなる、購買意欲が湧く気がします。

ページ数を間違えないように数字を入れたり、メインコンテンツを目立たせたり、内容が正確に伝わる目次を作りを心がけました。

9.表紙をデザインする

本の第一印象を決める表紙を作れば、完成はもう間近です。
表紙の制作にはIllustratorを使いました。

今回は最後までタイトルに悩んだのでこのタイミングで作りましたが、イメージやタイトルが決まっていればいつ作ってもいいと思います。

独学デザイン本の表紙の写真は、デザインコミュニティの東京オフ会のときにデザイナー仲間たちと一緒に泊まったBook and Bedで撮ったもの。

「読書から始まったデザインの勉強」「東京にでるきっかけになったイベント」「初心」「師匠が撮った写真」…これを見るだけでいろいろ思い出す、自分の中でストーリーがある表紙になってます。

10.全体のデザインを整える

最後はデザインが一貫しているか、誤字脱字はないか、読みやすいレイアウトになっているかなど、全体を俯瞰してチェック・微調整を行います。

私もそうでしたが、毎日同じ内容・デザインのものを見ていると「これがいいものなのか」を判断できなくなってきたりします。不安なら人にも見てもらいましょう。

入稿データがきちんと作れているかもしっかり確認し、印刷所に入稿、本の完成です!(今回の本番印刷前にはテスト出力もお願いしました)

▼テスト出力に関する記事

独学とデザインについて書いた本『独学×デザイン』テスト出力版が届きました
制作中の本『DOKUGAKU×DESIGN』のテスト出力版(第2便)が届きました

印刷が完了して家に本が届いた時は、箱を開けるのにとてもドキドキしました。

おまけの制作

今回は先着順でおまけのしおりを同封していたので、しおりの制作過程もご紹介します。(現在は配布しておりません)

しおりの制作で意識したこと

しおりの制作時には以下のことを考えました。

  • デザインは本書と合わせてシンプルに
  • しおりとして使いやすいサイズ
  • 厚すぎず薄すぎない
  • やわらかいく優しい質感の用紙
  • コストはなるべくかけない

印刷は自宅にプリンターがないため印刷会社に依頼するか、コンビニ印刷にするか、キンコーズを利用するかで迷いましたが、コンビニにはない紙の種類が選べてコストも抑えられるキンコーズを選択しました。

店頭で「マシュマロCoC 135kg」を購入し、自分で印刷・カッティング・穴を開けなどの作業を行い、最後にひもを通してしおりが完成しました。

ビニール袋にしおり・名刺・本を入れて、完成です。

制作の参考にした本

制作過程は以上ですが、初めての本制作で参考にした書籍も紹介しておきます。

タイポグラフィの基本ルール

文字組について学ぶために使った一冊です。文章を読みやすくする基本テクニックや、原寸見本のページを特に参考にしました。

いちばんおもしろいデザインの教科書

レイアウトの基本を勉強するために繰り返し読みました。InDesignを使ったグリッドの設定方法なども書かれていて、とても参考になりました。

レイアウト基本の「き」

デザインの勉強を始めた頃から何度も読み返している本です。その名の通り、レイアウトのきほんについて学ぶことができる参考書です。

デザインのルール、レイアウトのセオリー

レイアウトが本当に苦手だったので、こちらもレイアウト本ですが何度も読みました。余白の作り方が特に参考になります。

ページもの冊子・雑誌のパーツ別デザインコレクション

目次・扉・写真が多いページ・コラムなど、本の構成要素となるページをビジュアルメインで見ることができる一冊です。いいものを作るにはいいものをたくさん見る必要があるので、1月はほぼ毎日見てました。

入稿データのつくりかた

印刷物のデザインで失敗しないように押さえておきたいポイントや、入稿データを作るときの注意点などが書かれた教科書的な一冊。基本から学べて実用性も高いので大好きです。

まとめ

デザイナーになって初めて作ったオリジナルの本「独学デザイン本の作り方(制作過程)」についてご紹介しました。

慣れない本作りは分からないことだらけで苦労しましたが、作りながら学ぶことで得たものがたくさんありました。純粋に挑戦してよかったと思います。

今回ご紹介した本の作り方は、ポートフォリオを冊子にしたい場合や、ZINEを作りたいと思っている場合にも参考にもなると思うので、興味があればぜひ作ってみてください。

また、独学デザイン本自体にも興味を持ってくださった方は、以下のボタンから販売ページへ移動できるので、よければ手にとってみてください。

ABOUT ME
fuyuna
都内のデザイン会社に勤務するデザイナー|ウェブデザイン・モーションデザイン・グラフィックデザイン|元理学療法士|デザイン・アート・インテリア・お出かけ好き