私は2018年の春に病院を退職し、フリーランスのデザイナーになりました。
社会人7年目で医療職からの転職、さらにフリーランスになる選択をしたわけですが、自分はこの選択をしてよかったなと思っています。(いまは都内のデザイン会社に勤務しています)
なにがよかったのかは別の機会にまとめるとして、この記事では「異業種からデザイナーへの転職ですぐフリーランスになった理由」を書いていきます。
結論から言ってしまえば、好奇心がほとんど。
ただ、フリーランスになっても大丈夫という背景や確信もいくつかあったので、そのあたりについても詳しく書いていきます。
Contents
特にフリーランスへの憧れはなかった
転職をリアルに考えた時点では、働き方にこだわりはありませんでした。
「フリーランスになりたい」とか「デザイン会社に就職したい」とか、ほとんど頭になかったです。
あったのは、「デザインをずっとしていたいから、もう仕事にした方がいい」「デザイナーとして人の役に立ちたい、いい仕事がしたい、人の心を動かすものをつくりたい」という考えぐらい。
前職の仕事は大好きだったし、天職だとも思っていたけど、デザインが好きな気持ちをおさえきれず「デザイナーとしてい生きていく」選択をしました。
だから、別にフリーランスになりたいわけではなかった。
転職と同時にフリーランスを選んだ理由
デザイナーを本業にするということは、それで生きていく、生計を立てるということ。
趣味ならお金がもらえなくても仕事がなくても困らないかもですが、職業デザイナーは違う。そのことを頭にすえた上で、以下のような理由と背景からフリーランスを選びました。
- すでにお仕事をいただいている状況があった
- 人生経験のひとつとして興味があった
- 医療系国家資格という保険があった
- 貯金など金銭面での余裕があった
- フリーランスの先輩たちとの交流があった
- 就職はいつでもできると思っていた
- 自分が何をどこまでできるのか確かめたかった
それぞれについて詳しく書いていきます。
すでにお仕事をいただいている状況があった
前職のときから「副業」としてデザインの仕事をしていたので、転職する時点で「案件を確保しないと!」という状況ではありませんでした。
むしろ病院勤務とデザインの仕事を両立するのがむずかしい、と感じたことが「転職」の大きなきっかけでもありました。
フリーランスのクリエイティブチームに所属していたこともあり、案件がなくて暇になる、生活が困窮する、という状況は直近でなさそうでした。
フリーランスになるか、就職するかを主体的かつ余裕をもって選ぶことができたのは、この安心材料があったからとも言えます。
人生経験のひとつとして興味があった
これまで病院職員として組織に所属し、守られてきた身でした。
だから「フリーランス」という未知の働き方に興味はありました。純粋な好奇心です。
昔から何でも経験してみたい性格で、先行きが不明でも、後悔や失敗を伴うかもしれなくても、すべて織りこみ済みで「とりあえずやってみる」を選択しています。
前職で人の生死や人生に直接に関わる仕事をしていたこともあり、「失敗しても命までは取られない」「元気なときに動いてなんぼ」「自分で体験することに価値と意味がある」という考えが根底にはありました。
楽天家の性格も手伝い、デザイナーとしてのキャリアがなくても、仕事がなくなってお金に困っても、トラブルに巻き込まれてもいいから、「フリーランス」を経験してみようと思いました。
医療系国家資格という保険があった
興味本位、好奇心からフリーランスになったといっても、バックには確かな「保険」がありました。
(段取りや根回しは病院勤務で染み付きました)
はじめに書いた「すでにお仕事をいただいている状況があった」もそうだし、「医療系国家資格」も安心材料のひとつでした。
万が一、デザイナーとして金銭的、社会的に生きられなくなっても、国家資格と臨床で身につけた技術・知識がある。だから「完全に職を失うことはない」と確信していました。
デザイナーがだめなら理学療法士に戻る、という選択は現実しなかったと思うけど、頭の中には医療国家資格が保険として確かに存在していて、転職の後押しにもなりました。
また、二次救急病院でバリバリ働いていた、というだけでも社会的に信用が得やすく、会話が盛り上がりやすい面でも強みになりました。
貯金など金銭面での余裕があった
フリーランスは毎月決まったお給料をもらえる会社員に比べて、収入が激減する可能性があります。
特に前職がデザインと関係なく、ひとりで稼ぐスキルも持ち合わせていない場合は、年収が大幅に減ってもおかしくありません。
忘れてはいけないのは、フリーランスでデザインの仕事をするとき、その場で報酬がもらえるとは限らないこと。
ウェブデザインの案件なら、着手から約2〜6ヶ月ぐらいは報酬が自分のもとに入らないのも珍しくありません。その間お金がはいってこないことを覚悟する必要があります。
それでもフリーランスに踏み切れたのは、貯金や前職の退職金があったから。金銭的に余裕があったからです。
最悪の場合、半年ほど収入が0円になったとしても、家賃を支払い、1日3食の食事をし、携帯料金や公共料金、保険料等を支払い、友だちと食事にもいける。
そのぐらいのお金はあったので、心の余裕にもつながりました。
もしもフリーランスのデザイナーとしてやっていけなくても、「人生の夏休み」をとるぐらいの気持ちではじめられました。自分でがんばって稼いだお金だし。
反対にお金に余裕がないと、不信なビジネスやスクールに手を出したり、焦って格安案件を受けたり、損をする状況に陥りやすい気がします。
フリーランスの先輩たちと交流があった
転職前からオンラインで繋がった「フリーランスの先輩たち」と交流があったのも大きかったです。
転職当時は地方に住んでいて、まわりにデザイナーの知り合いも、ウェブに詳しい人もいませんでした。
そんな中、情報収集目的ではじめたツイッターを通して、運よく現役デザイナーの方々とつながることができました。
「こういうときどう対応すれば…?」「このデザインどうですかね?」「見積りってどうやって作れば…」「ここのコーディングが上手くいきません…」などひよっこの質問にこころよく答えてもらっていました。
本当にたくさん面倒をみてもらったし、デザイナーとして、フリーランスとして育ててもらいました。
いつでも頼れる存在、相談できる仲間がいるというのは心強く、フリーランスになる決断を後押ししてくれるものでした。
就職はいつでもできると思っていた
正直、就職はいつでもできると思ってました。
就活を軽く見たり、舐めていたわけではなく、転職前から「うちで一緒に働きませんか?」というお誘いもあったからです。
また、一般的な会社が求める人材の条件として、自分はあてはまっている部分が多いだろうとも思ってました。
というのも、多くの企業がひよっこデザイナー・異業種からの転職デザイナーに求めているのは、デザインがめちゃくちゃできることより、以下のような「人」や「姿勢」だと思うのです。(デザインできるに越したことはないと思うけど)
- 主体的に学び、仕事に取り組める人
- 課題の発見と解決に積極的な人
- 自走力のある人
- デザインが好きで、デザインをしている人
- 行動力のある人
- 発信力のある人
- 中途半端じゃない掛け合わせスキル・強みを持っている人
- 人と関係性を築き組織になじめる人
- 後ろ向きより前向きな人
- 全力で何かに取り組んだことがある人
- 夢中になれるものがある人
- 自分で自分の機嫌を取れる人
- おもしろエピソードを持っている人
- 性格が明るい人
- その会社にないものを持っている人
- 健康管理ができる人
すべて自分があてはまっていると言いたいわけではありません。
上記は「私が一緒に働きたい人」「一緒に会社をつくりたいと思える人」の条件をリストアップしたもので、少しでも当てはまっている項目が多い、もしくは突き抜けた何かを持っている人と働きたいです。
会社も同じで、相手が何を求めているのか、自分が入社することでお互いにどんなメリットがあるのかを考えつつ、自分と相性のいいところを選べば、就職はむずかしくないと思っていました。
実際、地方から東京に出てデザイン会社に就職したときも、特に苦労することはなく、自分がいきたいと思った会社を選んで就職することができました。
自分の話が長くなってしまってすみません。
まとめると、転職当時、就職はむずかしくない、いつでもできる。ならば先にフリーランスを経験してみるのもアリなのでは?という考えでした。
難易度が高い方を選びがちな性格なので、そのときより自分が苦労しそうな方を選んだ、とも言えます。
自分が何をどこまでできるのか確かめたかった
最後に、フリーランスという働き方を選ぶとき、もっとも気になっていたのは「自分がいま、何をどこまでできるのか」でした。
独学でデザイナーになったので、自分のレベル感がわからず、デザイン一筋でどこまでやれるのかがわかりませんでした。自信があったわけでもないし、できないこともたくさんあった。
でも、すべてできる必要はないとも思っていた。
だからこそ、自分が何をできて、何ができなくても困らないのか、どの部分を人に頼り、どんなスキルやデザインを伸ばしていくべきなのか、何を努力するべきなのか…この答えを知りたかったのだと思います。
いま思えば、「自分の可能性を知るため」にフリーランスを選んだのかもしれません。
結果的に、自分の得意なこと、やりたいこと、本当に好きなこと、人に求められていること、頼ってもらえること、強み、希望の働き方などを知ることができました。
フリーランスを経験したことで、実際の仕事の流れやビジネス、経営、営業、マーケティングといった、デザイン以外のことを学べたのもよかったです。
就職が簡単にできたと先述しましたが、フリーランスを経験したからこそ、開かれた可能性がたくさんあったようにも思います。
まとめ:やりたいならやってみればいい
異業種からデザイナーに転職すると同時に、フリーランスになった理由でした。
2年前の転職記録としていろいろ書きましたが、最終的に言いたいのは「やりたいならやればいい」ということ。
「フリーランスのデザイナーになりたいです。未経験からでもなれますか?」「デザイン未経験ですが、就職した方がいいですか?」というメールをよくいただきますが、とにかくやってみればいいと思います。
失敗が怖い、誰かに安全なルートを教えて欲しい、最短距離で理想の自分を手に入れたい、その気持ちはわからなくもないです。
でも、自分で経験してみないと何もわかりません。
私はフリーランスの活動をしたことで、「人と働くこと、チームで仕事することが好き」だと認識することができ、「もっと多く経験を積んで成長したい」という思いも重なり、就職することにしました。
いまは自分の好きな会社で、会社に必要としてもらいながら、毎日たのしく仕事をしています。
働き方や、それを選ぶ理由、背景、向き不向きは人それぞれです。
だから「デザイナーになりたい」「フリーランスになりたい」と思っている人は、自分の状況や未来を考えた上で、自分の判断に任せて行動を起こしていってください。