こんにちは。
fuyuna(@fuyuna_design)です。
こちらの記事では、デザインに関する「最近読んで良かった本」をご紹介します。
今回ご紹介する本は、『アートディレクションの型。デザインを伝わるものにする30のルール』という一冊。
著者はサントリー「ボス」や明光義塾など、数多くのヒット広告の制作やブランディングを手がけたアートディレクター・水口克夫さん(株式会社ホッチキス代表)です。
内容はアートディレクションにおける「型」の大切さが伝わるエピソードや、実際の仕事の例を交えた30の型・ルールが説明されていました。
どんな本?著書の概要
「アートディレクション」は、さまざまな課題をデザインやビジュアルを使って解決すること。
その役割を担うのが「アートディレクター」で、マトを外すことなく、適切にデザインやビジュアルを使いこなす力が求められます。
本書『アートディレクションの型。デザインを伝わるものにする30のルール』では、アートディレクターの水口さんの実際の経験・仕事の例をもとにした「アートディレクションの型」が30個紹介されています。
ひとつひとつの型について簡潔にまとめられた「アートディレクションの教科書」でありながら、広告に関する仕事の舞台裏がのぞける、短編ドキュメンタリーのような印象でした。
実際に読んでみて、こんな人にオススメできる本だと思いました。
- アートディレクションって何?という人
- アートディレクションの仕事をしている人
- アートディレクターを目指す人
- 美しいだけでなく機能するデザインをしたい人
- アートディレクターと一緒に働く人
- 広告やマーケティングに関わる人
本書で紹介されている「型」や「思考」はデザイナーとしても活かせるので、会社員やフリーランスのデザイナーさんにもぜひ読んでいただきたいです。
感想と印象深かったところ
『アートディレクションの型。デザインを伝わるものにする30のルール』を実際に読んでみた感想と、印象深かった部分を抜粋してご紹介していきます。
神さまの視点、アリの視点
同じものでも、それを見る視点によってそのものの印象は大きく異なります。
例えば人をアリの視点で見ると、同じ人でもダイナミックに見え、それ自体の形は部分的にしか見えない。神さまの視点で見ると人は小さく見えて、全体像が把握できる。
この視点の変化について、本書の中ではこう書かれています。
アートディレクションのいちばんの基本は、この視点の置き方にある。「物理的な視点」を動かす、つまりは「見方を変える」ことで、伝えるべき魅力や価値を描き出すのだ。
著書『アートディレクションの型。』より抜粋
佐藤オオキさんの著書『ウラからのぞけばオモテがみえる』でも視点の違いの面白さを感じましたが、本書を読んで改めて「複数の視点」から対象を観察することで効果的な表現ができることを学びました。
どこを絵にするか、どこを切り取るか
視点の違いでも見え方に大きく変化がありますが、「どこを絵にするか、どこを切り取るか」によってもイメージはガラッと変わります。
商品やサービスそのものが主役となる広告もあれば、仕事の背景やストーリーをメインで伝えるという手段もあり、アートディレクターやデザイナーは、シーンやメッセージを適切なビジュアルに置き換えて表現する必要があります。
本書では「切り取る」場面について、以下のように書かれています。
どうだ、すごいだろう、と大上段に構えて見えるのではなく、こんなところもあるんですよね、というくらいのさりげない自慢。「神さまの視点、アリの視点。」でも説明した「視点の位置」にも通じるところだけれど、そういう「上手な自慢」ができるシーンや状況などを見つけて「切り取る」。
著書『アートディレクションの型。』より抜粋
直接的に訴え過ぎずに、さりげなく場面を切り取ってストーリーを伝えることで、ユーザーに興味を持ってもらうことができる。
逆に言えば、ユーザーのことをていねいに考え、思いやることができなければ、一方通行のデザインになってしまう。
今まで私は商品やサービスの「ポジティブな面」を主張しがちだったので、これからはもっと広い視野を持ち、例えばネガティブな面も魅力に変えられるようなアプローチができるようになりたいと思いました。
才能を借りる、和える
デザインの仕事は、その人自身の才能やセンスで勝負するものだと思われがちだけど、実際はそうじゃない。本書の中でも以下のように書かれています。
カメラマンや美術デザイン、スタイリスト、モデル、あるいはプリンティング(印刷)なども含めて、それぞれの分野のプロフェッショナルたちと組んで、その「才能を借りる」。そうすることでアートディレクターは、自分の力以上のデザインや表現物をつくりだしていく。
著書『アートディレクションの型。』より抜粋
私はデザイナーとしての経験はまだ浅いですが、前職でも現在も自分の苦手なことは得意な人に頼るというスタンスでやってきました。
ただ本書を読むまでは、「相手に頼り過ぎている」もしくは「具体的に伝え過ぎている」部分が多かったように思いました。
具体的に伝えすぎることに関して、本書では以下のように書かれています。
最終形に近いものを見せてしまうと、先入観をもたせることになり、せっかくの創造性を狭めてしまうことになりかねない。そうならないように、あえて手書きのラフ画を見せて、彼らの力の伸びしろを残しておくのだ。
著書『アートディレクションの型。』より抜粋
また、人の力を借りるときの姿勢について、以下のように書かれています。
才能を借りようというときには、必要以上に自我をもちこまないほうがいいということだ。もちろん、必要なことはちゃんと伝えなくてはいけないが、余計な意地を張ったりはせずに、つねに相手の動きやすさを考え、相手を立てるようにする。
著書『アートディレクションの型。』より抜粋
人と一緒に仕事をしたり、チームで仕事をする場面ではこのような相手を立てる・思いやる姿勢が大切です。
さらに、アートディレクターは写真やデザイン、文章、素材、印刷など、各プロフェッショナルのアウトプットを把握し、制作を進行させる役割を担っており、本書の中では次のように書かれています。
かかわる人たちにプロとしてのもち味を発揮してもらいつつ、めざすアウトプットが生み出されるようにうながしていく。いわばアートディレクターは、「才能を和える」役割をになっているのだ。
著書『アートディレクションの型。』より抜粋
「才能を借りる」だけでなく、チームの才能を「和える」という表現も素敵だと感じました。
サービスに徹する
先日、引越しに必要な書類で「職業の分類」を選ぶ場面があり、「デザイナーは何にあたる?」という疑問がありました。
その時は深く考えずに「サービス業」にマルをつけたのですが、本書では次のように書かれていました。
総務省が定める日本標準産業分類によれば、デザインや広告の制作は、サービス業には分類されていない。しかし、メディアを通じて表現物を発信して、人びとによろこんでもらうという“使命”を考えれば、サービス業だ。さらに、商品が売れたり、企業のイメージが良くなったりして、クライアントによろこんでもらうという目的を考えても、やはりサービス業だといえると思う。
著書『アートディレクションの型。』より抜粋
これまでサービス業は直接お客様の対応をする仕事というイメージでしたが、確かにクライアントもお客様で、サービスは人によろこんでもらうためにすることであり、もてなすことだと気づきました。
オンラインで解決できることが増え、直接的な人との関わりが減りつつある現代ですが、人の心を動かすデザイン、人によろこんでもらえる「サービス」を提供できるデザイナーでありたいですね。
まとめ
今回は、最近読んで良かったデザイン関連書『アートディレクションの型。デザインを伝わるものにする30のルール』をご紹介しました。
本書はアートディレクターの著者が、実際の仕事から培ってきたアートディレクションに必要な見方や視点、思考を、出版まで5年かけてまとめあげられた一冊でした。
最後に、アートディレクションは「問診」に似ていると著者は言っており、元医療職として同じことを感じていたので、今後もクライアントの抱える問題を丁寧に評価し、解決策や将来をしっかり見据えたアプローチができるデザイナーでありたいと思いました。
気になった方は、ぜひ読んでみてください!
▽以下の本も非常に参考になったので、オススメです。
https://fuyuna.net/book-design