「どうすれば人の心を動かすことができる?」
「人の心を動かす体験ってどうやって作る?」
商品やサービスを扱う人なら、きっと気になる“人の心の動かし方”。
人の心が動くことで、「ついやってしまう体験」が生まれます。
こちらの記事では、名作ゲームを題材に、人が「ついやってしまう」体験をデザインする方法について書かれた一冊、『「ついやってしまう」体験のつくりかた』をご紹介します。
- 人の心を動かす仕事がしたい人
- 人の心を動かすデザインがしたい人
- ゲームの企画・デザインに興味がある人
- 体験デザインを学びたい人
- ゲームとデザインが好きな人
Contents
「ついやってしまう」体験のつくりかた


今回ご紹介するのは、『「ついやってしまう」体験のつくりかた』です。
著者は元・任天堂のプランナーとしてWiiの企画担当もされていた玉樹真一郎さんです。
有名ゲームの中にある体験デザイン
本書は、ゲームを題材として“もともとの人間の性質”を活かした「ついやってしまう」体験を生み出すしくみについて学ぶことができます。
- 「つい」やりたくさせてしまう
- 「つい」熱中させてしまう
- 「つい」誰かに言いたくさせてしまう
上記のような「つい」の裏側には人の心の動きがあり、ユーザーの心を動かすためには「直感・驚き・物語」のしくみについて理解し、体験をデザインする必要があります。
以下、人の心を動かす体験デザインの手法について、簡単にまとめていきます。
体験のつくりかた ①直感のデザイン
ユーザーの心を動かす基本となる体験が「直感のデザイン」です。
- 仮説「こうやるのかな?」
- 試行「やってみよう」
- 歓喜「思った通りだった!」
人間に共通する脳や心の性質や記憶を利用し、シンプルで簡単な体験をデザインすることで、ユーザーに仮説を抱かせ、思考させ、仮説が正しかったことをユーザーに気づかせ、歓喜させます。
人がゲームで遊ぶのは、ゲーム自体がおもしろいからではなく、プレイヤー自身が直感する体験そのものが面白いから。直感のデザインがあるからです。
体験のつくりかた ②驚きのデザイン
直感の体験が一定時間続くと、ユーザーには飽きや疲れがでてきます。そんなとき、ユーザーがゲームをやめてしまわないように「驚きのデザイン」を使います。
- 誤解「こうなるはずだ」
- 試行「やってみよう」
- 驚愕「え!? まちがいだった」
「こうなるはずだ」という前提への思い込みと「平穏な日常が続くはずだ」という日常への思い込みを利用し、ユーザーの予想を覆すことで驚かせる手法です。
①直感のデザインと②驚きのデザインを組み合わせることで、直感的かつ飽きることのない長時間の体験をつくれます。
体験のつくりかた ③物語のデザイン
①直感のデザインと②驚きのデザインの組み合わせで、ユーザーに長時間の体験を提供することができますが、心を動かす「意義」がなければゲームをやめてしまいます。
そこで必要になるのが、「物語のデザイン」です。
- 翻訳:状況の理解
- 成長:体験を通して成長していく
- 意思:ユーザーに決めさせる
体験を通じてユーザー自身の物語を生み出させるのが、物語のデザインです。ユーザーがゲームを始めた瞬間から状況を把握させ、ゲームを進める中で成長を促し、ユーザーの意思によって選択させる。
ゲームの物語をユーザーに体験させることで、「自分の物語はこうだった」と人と共有したくなったり、そのゲームの意義を見出してもらうことができれば、心を動かす体験が完成します。
本そのもので「体験」する本
本書の興味深いところは、書かれている内容だけでなく、「本そのもの」から体験デザインを学べることでした。
問いがあり、考え、答えを知るという流れができており、読み進める中で常に体験させられて、ページをめくる。次のページには答えがあるかもしれないと次第に考えるようになる。
仮説、検証、歓喜を体験し、仮に問いに間違えても「知る」ことができて、考えたことに対して著者が褒めてくれる。
そんな体験・学習ができるようになっていて、たまに「試されている」ようなデザインも現れるので、最初から最後までページをめくるのが楽しい一冊でした。
ゲームに興味がない人間でも楽しめた
ゲームが嫌いなわけでも、ゲームに対してネガティブな感情があるわけでもありませんでしたが、私は「ゲームに興味がない」人間でした。
本書の半分ぐらいは私の知らないゲームが題材として取り上げられていましたが、そのゲームの中で重要な部分・注目するポイントがわかりやすく書かれていたため、途中で離脱することなく楽しく読み進められました。
本書を読むことで「ゲームはユーザーのことを考え尽くし、体験をデザインしたもの」だと学び、ゲームに興味を持つと共に、今までとは違った視点で見れるようになりました。
より深く学ぶための参考資料も掲載
巻末には、体験デザインを作るための「直感のデザイン」、「驚きのデザイン」、「物語のデザイン」、「ゲームと遊びを掘り下げる」をより深く学べる本やゲームが紹介されていました。
参考資料にも目を通すことで「体験デザイン」についての理解がより一層深められると思うので、今後少しずつ読んでいきたいです。
まとめ
今回は、人の心を動かす方法について学べる一冊、『「ついやってしまう」体験のつくりかた』をご紹介しました。
本書の中で題材とされているゲームや本書自体から、人の性質を上手く利用し「ユーザーの体験」をデザインするしくみについて学ぶことができました。
ゲームに興味がない人間の心を動かした一冊でもあったので、人の心を動かす体験をつくりたい方は、ぜひ読んでみてください。