デザイナーからディレクターに社内転職して2年。変わったこと、気づいたこと。

デザイナーからディレクターになって、この4月で2年になりました。転職といっても職場は変わらず、同じ会社での肩書き変更です。
「後悔するかもしれない」と思ったことは一度もなく、2年たった今も、あの選択は正しかったと感じています。
ただ、実際に動いてみて変わったこと、気づいたことも、思っていた以上にありました。2年が経った節目に、キャリアチェンジを振り返り、今思うことを記録しておきます。
Contents
なぜディレクターになろうと思ったのか
いきなり「ディレクターになろう」と思ったわけではありませんでした。最初は「もっと人と話したい」というシンプルな気持ちからはじまり、半年ほどかけて自分の特性やキャリアを整理していく中で、転職がベストだという結論にたどりつきました。
人と話す仕事がしたかった
デザイナーになる前、わたしは理学療法士として働いていました。病院でのリハビリの仕事は常に対人で、患者さんやご家族、医師、看護師など、さまざまな人たちと「対話」しながら仕事を進める日々でした。
デザイナーになってからは、画面と向き合う時間がほとんど。デザインが好きで転職しましたが、人と話すことが好きだったこともあり、時間が経つにつれて「人と話したい」という気持ちが抑えられなくなっていきました。
その背景には、「お客さまが遠い」という感覚もありました。作ったデザインはディレクターが提出してくれます。お客さまの反応は聞かせてもらえるけれど、どんな顔で笑ったか、どんな声で感想を言ったか、何がイマイチだったのか、直接は確認できない。そこに違和感と物足りなさを感じていました。
上流の仕事への関心が強かった
デザイナーとして働く中で、手を動かすより「何をどう作るか」を考えることの方が好きだと気づく瞬間もありました。
デザインが好きなのは大前提として、構成やワイヤーフレームを考えるのもおもしろかった。何もないところから輪郭を作っていく感じの作業です。著書の『これからはじめるFigma Web・UI入門』を執筆したときも、どんな章立てで、どんな構成にしたらわかりやすい入門書になるかを考えるのが楽しかった。スライドや営業資料をつくるときも、正直デザインより「何をどんな順番で、どのように伝えるか」を考える方が好きでした。
個人ブログをやっていることも影響していたと思います。どんな記事を書くか、どんなカテゴリ構成にするか、どう回遊できるようにするか。気づけばそういうことを自然に考えていました。
そうして自分の好きな仕事、やりたいことを整理していくうちに、0→1の「まだ何でもできる段階」が特に好きなのだという発見がありました。設計がその後のすべての工程に影響するからこそ、そこにエネルギーを注ぎたい。価値を感じる。そういう自分の特性が、だんだん見えてきました。
今後のキャリアと、本当にやりたいことを考えた
「5年後も同じ仕事をしていたいか?」
理学療法士からデザイナーに転職するときも、同じ軸で考えました。答えはノーでした。実際は、理学療法士もデザイナーも「好き」だけどやめました。もっとやりたいこと、進みたい道が目の前にあったから、そっちに行きたい。そういう意味での答えでした。
デザイナーをやめるまでの5年間は、会社や個人で登壇の機会をもらったり、共著で書籍を出版したり、制作したサイトが書籍に掲載されたり、グッドデザイン賞を受賞できたりと、われながら真摯に、楽しく打ち込んできました。
それでも、自分の性格や特性を振り返ると、ひとつのデザインにコツコツ向き合うより、人とコミュニケーションを取りながら場をつくっていくほうが向いている。自分よりデザインが好きで得意なメンバーに存分に活躍してもらえる環境をつくる方が、全体としていい仕事につながると考えていました。人から与えられた作業をするのではなく、自分で仕事をつくりたい気持ちもありました。
実際、作ったデザインに愛着こそあれど執着はなく、サイト全体の構成や言葉・写真・デザイン・実装・使い心地・成果といった「総合的な完成度」の方に強く興味がありました。デザイナーとしてのキャリアの中で「自分で何でもつくれる」ことを知れたのは、かけがえのない経験です。でも次は、それを活かして本当に求めている仕事に進むべきだと思いました。
ひとつのことを深く追求するスペシャリストより、横に展開しながら深めていくゼネラリストの方が自分には合っている。理学療法士としての課題解決力やチームで働く経験、デザイナーとして手を動かしてきた経験は、必ずディレクターの仕事に活かせる。そう思い、転職を決めました。

会社を変えずに転職する選択
社内で肩書きだけを変えることは、社長と話して決めました。
慣れた環境でディレクターとして経験を積めたらうれしい。でも、デザイナーじゃない自分は今の会社にいらないかもしれない。自分はできると思ってるけど、実際は「ディレクター未経験」なわけだし、うまくやれないかもしれない。もし相談してみて微妙だったら、外部に転職しよう。
そんな考えを持って相談してみたら、あっさりOK!むしろ「やってもらえると助かる」「できるよ」と歓迎してもらえました。それまで4年ほど一緒に働いてきた社長からの言葉は素直にうれしく、少しほっとしたのを覚えています。
そこからはトントン拍子で話が進み、数日後には「プロジェクトマネージャー」に肩書きチェンジ。しばらくして「わかりづらいから」と今の肩書きに落ち着きましたら、
振り返ってみると、外部転職と肩書きの変更をまとめてせずに済んだことは、本当にありがたかったと思います。まったく知らない環境で肩書きを変えるのはリスクがありますし、ディレクターとして実績がない状態で転職活動がうまくいくとも思えません。
あのとき受け入れてくれた社長と会社、無謀な選択をしなかった自分に感謝しています。

ディレクターになって変わったこと
ディレクターとして2年働く中で感じた、デザイナー時代から変わったことを書いてみます。業務内容はもちろん、視点や意識がいろいろ変わった気がします。
ビジネス視点が必要になった
お客さまと直接やりとりするようになって、「このサイトをどう作るか」より先に「なぜこれを作るのか」「何を作るべきなのか」を考えるようになりました。
お客さまが「こういうものをつくりたい」と言っていても、それが本当に課題の解決につながるのか。たとえばウェブサイトの制作を依頼してくれたお客さまに対して、「営業用の資料もあわせてつくりませんか」と提案することもあります。構成案を企画して、もともとの依頼とセットで提案する、という感じです。
ただ言われたものを作るのではなく、お客さまの課題を解決するための最善策を考えて提案すること。それがディレクターの仕事だと思っています。
八百屋にたとえるなら、野菜を売るだけでなく、その人が幸せになれる野菜とレシピをあわせて提案できる人になりたい。そのためには、経営やマーケティングの知識をもっと深めないといけないとも感じています。デザイナーのころから興味はあったけれど、今はより切実に、自分ごととして。
コミュニケーションの量が激増した
ディレクターになってからは毎日、「ずっとしゃべってるなあ」という感覚です。
チャットやメールでお客さまとやりとりして、オンラインで打ち合わせして、オフィスではデザインのレビューをしたり、プロジェクトや自社のことを相談したり、相談されたり。1日中だれかと話している感じです。最近はAIを活用する場面も増えたので、AIとチャットで話すことも増えました。
「もっと人と話したい」という思いがディレクターに転職した理由のひとつだったので、120%希望がかなっている状態です。ただ、1日のコミュニケーション量は想像以上で、今度は自分の作業時間をうまく確保できなかったり、集中して考える時間をつくるのが難しかったりして、今の課題のひとつです。
デザインをつくる人から、レビューする人へ
デザインを自分がつくる機会はほとんどなくなり、今はデザイナーがつくったものをレビューするようになりました。
特に初稿などはじめの段階のデザインを確認することが多く、意図が伝わるか、ターゲットにとって適切か、お客さまの要件を満たしているかといったことをチェックしています。アシスタントデザイナーがつくったものをレビューする機会も多いです。
最終案に近い段階では、リードデザイナーやクリエイティブディレクターがレビューをつとめ、わたしは聞く立場になります。最終的なデザインの意図や確認事項をお客さまに伝えられるよう、どのような過程でデザインができたのか、できる限り把握するようにしています。
ただ、言葉で伝えるのが難しいときは、別案やイメージを自分でつくることもあります。「こういうのがいいんじゃない?」と手を動かして示し、より最適な案をデザイナーと探索する感じです。このやりかたは、元デザイナーならではかもしれません。
一方で、その作業に時間をとられて他の仕事に影響が出てしまうこともあります。時間の使い方、どこまで介入するかは永遠の課題です。それでも、デザインを完成させることがわたしの仕事のひとつでもあるので、他の業務とのバランスを考えながら、今後もやっていくと思います。
プロジェクトへの責任感が変わった
デザイナーのころは、デザインフェーズが終わればいったん手が離れました。ディレクターになってからは、キックオフから納品まで、ほとんどずっと同じ熱量でコミットし続けることになります。
受注後すぐに環境整備とキックオフの準備をして、方針や成果物を確認するところからはじまります。日々のお客さま対応で信頼を築きながら、サイトマップやワイヤーフレームを含む情報設計を進め、デザインの進行管理・レビューへ。ライティングも並行して進みます。デザインの提出後もフィードバックを整理して調整を依頼し、仕様を整えながら実装チームへつなげていきます。実装中も仕様の不明点を確認・整理しながら進め、完成後は誤字脱字や表示崩れがないかチェックしてお客さまに確認を依頼。公開まで、ほぼ手が離れることはありません。
スムーズに納品できればいいですが、ウェブサイトの公開前は何かが起きます。ヒリヒリ高まる緊張感の中で、「簡単な仕事なんてないなあ」といつも思います。
それでも、公開後に気がゆるむ瞬間のほっとした感覚は、デザイナー時代の何倍も大きい。本当に疲れる。めちゃくちゃ疲れるけど、この仕事がおもしろくて大好きです。
名もなき仕事を全部やる人になった
ディレクターの仕事には、「名もなき仕事」がたくさんあります。デザイナーもエンジニアも、それぞれの担当範囲が比較的わかりやすく、主にその範囲の仕事に集中しています。でも、プロジェクトを進めるなかで「どちらの範囲でもないこと」が必ず出てきます。
議事録に書いてあるけど誰もタスク化していないこと、お客さまからの質問が誰の担当でもない内容だったこと、ミーティングのアジェンダや資料の準備、お客さまのタスク管理、認識のズレに誰も気づいていないから自分が整理すること。
あげはじめるときりがないし、そもそも無意識にやっていることも多いと思います。誰も担当していないものは全部、自分のタスクだと思って動いています。それを放置すると、あとから大きな問題になることもあります。
プロジェクトを円滑に進めるためにも、お客さまやチームのメンバーに気持ちよく仕事をしてもらうためにも、名もなき仕事を全部やることを意識しています。

3年目を迎える今、感じていること
2年たってみて、あのとき転職してよかったと思っています。
大変なことはたくさんあります。コミュニケーションに追われて自分の時間がつくれなかったり、名もなき仕事が積み重なって気づけば夜になっていたり。簡単な仕事なんて、一つもない。
それでも、ディレクターの仕事はおもしろい。お客さまや社内の合意をとりながらプロジェクトを推し進めて、全員が自分の力を存分に発揮できる場をつくること。そういう仕事が、自分には向いていると感じています。
お客さまと直接話して、プロジェクトが動いていくのを最初から最後まで見届けられる。公開後にほっとして、少し気が抜けるような感覚。デザイナーのころには得られなかったものです。
3年目に取り組みたいことはたくさんあります。時間の使い方と作業効率の改善、提案とプロジェクトマネジメントの質を上げること、AIを活用したワークフローの最適化、デザイン・ビジネス・マーケティングの学びを深めること、そして自分の知識や経験のナレッジ化と発信。書ききれないくらいあるけれど、ひとつずつ取り組んでいきたいと思っています。この記事もその一歩です。

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