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財布は踊る、お金に振り回される身近な人たち【読書日記】

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ひさしぶりに小説が読みたくなって、気になる本リストに入っていた『財布は踊る』を買ってみた。読みたいと思ったきっかけは覚えていないけど、少し前から原田ひ香さんの作品が気になっていた。

この記事はゆるい読書日記になります。ネタバレを含むので、内容を知りたくないかたは前のページにおもどりください。

「今よりもう少し、お金がほしい」

専業主婦として穏やかに暮らす葉月みづほ。
彼女はある夢を実現するために、生活費を切り詰め、人知れず毎月二万円を貯金していた。努力が実り、夢を実現した喜びも束の間、夫に二百万円以上の借金があることが発覚する。

株での失敗、リボ払いの罠。
日常に潜むお金の落とし穴からどう逃げる? 
切実な想いと未来への希望を描く「お金のつくりかた」超実践小説。

▼主な登場人物
・葉月みづほ 夢を実現するため生活費を切り詰める専業主婦
・水野文夫 FXの情報商材の勧誘を行うフリーター
・野田裕一郎 株の取引で大損した元会社員
・善財夏実 「お財布アドバイザー」かつ売れないライター
・平原麻衣子 奨学金返済に苦しむ契約社員
・斉田彩 麻衣子の親友。同じく奨学金返済に苦しむ

引用元:Amazon 商品ページ

本書は「お金」にふりまわされる人たちのストーリー。主要人物である主婦・みづほがコツコツお金をためて買った、イニシャル入りのヴィトンの財布。そのまわりでさまざまな登場人物たちの物語が、バトンを回すように展開されていく。

はっきり言って今はお金に困ってないけど、一歩違ったら、自分もこっち側の人生だったかもしれない。きっと運が良かっただけ。明日は我が身。そう思う瞬間が何度かあり、リアルで身近な話題のように感じた。

「どれだけ使っても3万円の請求しかこない」… 夫がリボ払いをしていることに気づいていなかったとき。「支払いは…?」不安を抱えながら何度も確認したみづほ。それに対してイラつく夫。見ていてザワザワした。リアルな描写に、緊張感が伝わってきた。

見えないところで、それぞれの事情を持つ人たちがつながっている。知らなくていいこともある。すべて知っているのは、財布だけ。それがおもしろかった。本のタイトルや各章の主語が「財布」なのはそういうことか。主人公は財布だったんだ。いま気づいた。

数人の登場人物がいるなかで、特に共感したのは「善財夏実」だった。売上や読者の反応を意識するあまり、本当に書きたいことが書けなくなっていく。どんどん俗っぽいものに寄っていく。わかる、わかるぞ。恥ずかしながら自分にも経験があるし、なんならまだ上手くそこから抜け出せていない。だからこそ、最後のほうで「本はぜんぜん売れません」とスッキリした顔で言っている善財夏実を見て(見てないけど)ホッとしたし、希望が持てた。

生活費を切り詰める専業主婦、情報商材を売るフリーター、株で大損した会社員、売れないライター、奨学金返済に苦しむ契約社員など、本書には「よくある境遇」の人々が登場する。とても景気が良いとは言えない日本の現状を考えると、だれかしらの登場人物に感情移入する読者は多そうだ。

終盤でみづほが財布と一緒に家を買おうとしたときは、「なんだか変わってしまったな。お金を持つとこうなっちゃうのか」と少しさみしいような、残念な気持ちになった。

でも結局、みづほは買わなかった。買わない選択をしてくれた。これがうれしかった。選択肢を手に入れた人間は、買うことも、買わないこともできる。人が変わった瞬間を見れたような気がした。

人生は選択の積み重ねだ。その選択が正しかったかどうかは、ずっと先でしかわからない。いまできることは、自分の気持ちにウソをつかず、何があっても胸を張っていられる道を選ぶこと。自分の人生に責任を持ち、いま・ここでベストを尽くこと。

また、執着や過度なこだわりは視野せまくし、選択の精度をにぶらせる。選択肢を減らことにもつながりかねない。そうならないために、本当に大切にしたいものはなにか、どんな人生を送りたいか、どんな人間でありたいか、といったことを考え、意思を持ち、行動したいと思った。

まとまりはないけど、これで『財布は踊る』の読書日記は終わりです。

読書は感想を書いて考えを深堀りし、新しい気づきを得るところまでやるともっと楽しい。そんな読書体験をより豊かにする気づきももらえました。読んでよかったです。

ABOUT ME
fuyuna
都内のデザイン会社に勤務するデザイナー|ウェブデザイン・モーションデザイン・グラフィックデザイン|元理学療法士|デザイン・アート・インテリア・お出かけ好き